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松山ケンイチ

総合:
(5点満点中4.3点)
4.3

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作品:DEATH NOTE デスノート the Last name (2006)

「エル」に報いられた男

採点:
(5点満点中5点)

投稿日時:2007/01/08 21:11:39   投稿者:諸星大五郎さん

役立ち度:186

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諸星大五郎さん

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 最近テレビのインタビューで松山ケンイチを見た。
この人は「エル」じゃない。ごつい感じのスポーツマンなので驚いた。棒高跳びの選手だったらしい。
 
 それじゃあ、あの「エル」はなんだったんだ?
きっと彼は、この映画出演が決定してから、撮影が終わるまで「エル」の役作りに不休で取り組んだのだろう。彼の努力と研鑽の結晶が「エル」だったのだ。
 思えば「エル」は、まったく架空の人物。モデルになる人などいるはずもない。こういう絵空事の人物を、存在感ある人間として演じきる、それが役者冥利というものだろう。
 彼は2003年ごろから映画に出ているが、今、大ブレイクしている。彼が懸命に取り組んだ「エル」が、感謝して彼に報いたのである。

 さて、そもそもヒーローにはふたつの種類がある。「ウルトラマン型」と「仮面ライダー型」である。前者は生まれついての正義の子。勧善懲悪の善である。ウルトラマンが、子供のころカツアゲしてた、なんて話は聞いたことがない。
 一方「仮面ライダー」はもともと悪の組織ショッカーが造った改造人間なのである。このタイプは「ダーティーヒーロー」と呼ばれることが多い。心理的な屈折を抱えた正義なのである。
日本において、このダーティーヒーローは、暴れん坊のヤマトタケルに始まり、デビルマンに止めを刺す。

 さて「エル」も、どうやらヒーローとしては後者だ。愛情を求めるかのようにお菓子をむさぼる。コミュニケーション障害もあるようだ。
彼の知能は、彼の失ったものと引き換えに得たものなのである。
 プロファイリングのダーティーヒーローと言えば「レクター」をすぐに思い浮かべる。しかしエルは、それとはまた違った意味のヒーローでもある。

 エルは「いたいけなヒーロー」なのだ。漢字で書けは「幼気」である。松山が演じたエルの目つき、姿勢、声。見るものは心の底にある「庇いたい」という気分を刺激される。それがあってこそ、あのラスト、鹿賀との精神的交流が光るのである。松山は、エルという、現代の気分を反映した、まったく新しいヒーロー像を造ることに成功した。

 それにしても無味乾燥に菓子を食うシーン。パンフによれば、あの菓子は彼が選んだそうだが、その中で串団子を、瓶のたれに付けて食べるシーンがあった。瓶のたれが琥珀に透け、エルの白い顔とともに映ってとても美しい。団子を食って美しいなどということが、映画映像ではありえるのである。水戸黄門の「うっかり八平」も見習った方がいいのだ。
 
 エルを作り上げた松山ケンイチという男を、私は2006年映画界の収穫と呼ばずにはいられないのである。

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