諸星大五郎さん
イメージワード
- ・カリスマ
- ・神経質
- ・クール
- ・キュート
- ・都会的
- ・誠実
- ・知的
|
最近テレビのインタビューで松山ケンイチを見た。 この人は「エル」じゃない。ごつい感じのスポーツマンなので驚いた。棒高跳びの選手だったらしい。 それじゃあ、あの「エル」はなんだったんだ? きっと彼は、この映画出演が決定してから、撮影が終わるまで「エル」の役作りに不休で取り組んだのだろう。彼の努力と研鑽の結晶が「エル」だったのだ。 思えば「エル」は、まったく架空の人物。モデルになる人などいるはずもない。こういう絵空事の人物を、存在感ある人間として演じきる、それが役者冥利というものだろう。 彼は2003年ごろから映画に出ているが、今、大ブレイクしている。彼が懸命に取り組んだ「エル」が、感謝して彼に報いたのである。
さて、そもそもヒーローにはふたつの種類がある。「ウルトラマン型」と「仮面ライダー型」である。前者は生まれついての正義の子。勧善懲悪の善である。ウルトラマンが、子供のころカツアゲしてた、なんて話は聞いたことがない。 一方「仮面ライダー」はもともと悪の組織ショッカーが造った改造人間なのである。このタイプは「ダーティーヒーロー」と呼ばれることが多い。心理的な屈折を抱えた正義なのである。 日本において、このダーティーヒーローは、暴れん坊のヤマトタケルに始まり、デビルマンに止めを刺す。
さて「エル」も、どうやらヒーローとしては後者だ。愛情を求めるかのようにお菓子をむさぼる。コミュニケーション障害もあるようだ。 彼の知能は、彼の失ったものと引き換えに得たものなのである。 プロファイリングのダーティーヒーローと言えば「レクター」をすぐに思い浮かべる。しかしエルは、それとはまた違った意味のヒーローでもある。
エルは「いたいけなヒーロー」なのだ。漢字で書けは「幼気」である。松山が演じたエルの目つき、姿勢、声。見るものは心の底にある「庇いたい」という気分を刺激される。それがあってこそ、あのラスト、鹿賀との精神的交流が光るのである。松山は、エルという、現代の気分を反映した、まったく新しいヒーロー像を造ることに成功した。
それにしても無味乾燥に菓子を食うシーン。パンフによれば、あの菓子は彼が選んだそうだが、その中で串団子を、瓶のたれに付けて食べるシーンがあった。瓶のたれが琥珀に透け、エルの白い顔とともに映ってとても美しい。団子を食って美しいなどということが、映画映像ではありえるのである。水戸黄門の「うっかり八平」も見習った方がいいのだ。 エルを作り上げた松山ケンイチという男を、私は2006年映画界の収穫と呼ばずにはいられないのである。
利用規約に違反している投稿を見つけたら、下記のリンクから報告できます。詳しくはこちら。
□ 違反報告をする □
|
|